1990年代後半、部活動を学校単位の取り組みから地域単位の取り組みへ・・という「学校における働き方改革に関する緊急対策」を文部科学省が発表し、半田市では学校における部活動(特にスポーツ系)が外部講師による指導の下で行われるようになりました。そのような状況の中、文化系部活動は指導者不足もあり縮小傾向になってまいりました。マツイシ楽器店ではそのような状況に危機感を抱き、小中学校での吹奏楽指導に経験豊かな清水豈明先生に相談を重ねていました。
折しも、私たちの危機感を察した当時の故 竹内半田市長と故 間瀬半田市教育長のお二人の後押しを戴き、「音楽を通じた青少年の健全育成を目的」とした学校の枠を超えた吹奏楽団「半田ジュニアブラスバンド」の設立準備委員会が平成8年(1996年)に結成されました。
設立準備委員会は発足したものの、先ず練習会場の確保をしなければなりません。検討を重ねた結果、教育委員会の許可を得て、団長に就任していただく予定の清水豈明先生が校長先生をお勤めになっている半田市立乙川小学校の体育館が練習会場に決定いたしました。
そして、練習会場を確保した後は指導者探しと団員募集です。学校で吹奏楽指導の経験ある先生方を中心に、アマチュア音楽家の皆様にもお願いし指導者を揃え、そして学校を通じての団員募集となりました。
設立当初の団員は40名弱、楽器未経験という団員が殆どでした。
そして、大きな問題が「楽器の確保」でした。部活動で使わなくなった楽器を小中学校からお借りし、練習が始まりましたが、楽器はとても状態が悪く、リペアを施さなければまともに音も出ない状態のものばかりです。それらの楽器を音が出る状態にリペアし、1997年にようやく「半田ジュニアブラスバンド」は設立されました。
平成10年(1998年)半田ジュニアブラスバンドは「第1回定期演奏会」を開催しました。壊れかけた楽器を使い「ワルツ シェリー・リン、コロネルジョン・サービスメドレー」が会場に響き渡りました。
この頃、設立準備委員会は半田ジュニアブラスバンド後援会へと名称を代え、市内建設業者の社長様に初代の後援会長に就任頂きました。後援会長に楽器備品の充実の必要性を訴えたところ、後援会長からは「団員たちにモノの大切さを教えなければならない」というお言葉を戴き、暫くの間は壊れかけた中古楽器を大切に使いました。
しかし、この第1回の定期演奏会を経て、様々な方々に「音楽での青少年の健全育成の意義」をご理解いただき、団への楽器寄贈の機運が高まってまいりました。後援会長や市長・教育長の後押しもいただき、地域の企業・団体へ協賛寄付のお願いに日参しました。
半年余りの楽器協賛寄付お願い行脚の甲斐があり、市内の企業・団体様からの寄付は1000万円を超える金額になりました。個人持ちが難しいティンパニーやチューバをはじめとする大型楽器、更にはトランペットやフルート、サックスなど殆どの楽器を揃えることができました。そして、団員保護者や指導者各自が負担し半田ジュニアブラスバンドのテーマカラーである黄色ジャケットの制服も完成しました。
半田ジュニアブラスバンドの活動のテーマは「音楽の輪・人の和」です。吹奏楽活動を通じての人間教育に重きを置き、コンクールなどに出演挑戦するのではなく、音楽活動から健全な青少年を育成していきたいという願いをもって活動を展開しています。だからこそ多くの皆様の賛同やご協力を戴き、ボランティアで携わってくださる方々に支えられ、また高校生や大学生、更に社会人になっても団に残り後輩の育成に携わってくれるOBやOGも数多く輩出してきたのだと思います。
設立22年目を迎える半田ジュニアブラスバンドは過去多くの団員を育ててまいりました。設立当初の団員はすでに立派な社会人となり様々なシーンで地域社会を支える人となっています。音楽の楽しさ、協調と協力を必要とするアンサンブルの楽しさを経験した団員は、これからも人と人との繋がり「人の和」を、そして音楽を一緒に奏でる楽しさ「音楽の輪」を大切に次世代に向かって歩んでくれるものと確信しています。
半田ジュニアブラスバンドは、地域のボランティア、保護者の協力など様々な方々の関わりで運営されています。
団の運営を経験していただくことも、これからの地域社会にとっては様々なシーンで生かされるべきことだと思っています。「音楽を通した青少年の健全育成」が「地域社会の健全育成」に発展する活動になるよう尽力してまいりたいと思います。
2020年、半田ジュニアブラスバンドはブータン王国親善演奏旅行を行う予定でしたが、新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大により断念いたしました。そして、新型コロナウィルス感染症パンデミックが世界的に収束した2024年8月に、初のブータン王国親善演奏旅行を催行しました。吹奏楽団のないブータン王国で3つの学校での演奏の機会を得、ブータンの方々に音楽での大きなインパクトを与えられたことと思います。更にブータンの青少年との交流は半田ジュニアブラスバンドブータン王国親善演奏旅行参加メンバーにとって「幸福の価値」を考える機会になりました。
半田ジュニアブラスバンドはこれからも音楽を通じて地域の青少年を健全に育成する役割を担ってまいります。